Antaa Lab,Design Talkインターン生
小泉穂野香による施工事業者様へのインタビュー
インタビュアー:小泉穂野香
~時間を忘れて、藍と向き合う。~
美瑛・結の杜が届ける「世界にひとつだけ」の体験
・古材と藍が循環する場所で、水野里紗さんが描く美瑛の未来
北海道美瑛町に、藍染め体験とカフェを併設した複合施設「結の杜(ゆいのもり)」があります。運営するのは、旭川を拠点に藍染めを手がける「水野染工場」。
そんな結の杜の水野理沙さんへお話を伺ってきました。
以下、水野理沙さん → (水野) 小泉穂野香 → (穂野香)
美瑛に根を張るまで——縁がつないだ、廃校との出会い
結の杜がオープンしたのは2022年。AntaaLabとほぼ同じタイミングで歩み始めました。
もともと藍の栽培から製造まで一貫して行うことは、水野染工場の社長が10年以上温め続けてきた構想でした。最初は東神楽での開業を検討していたものの、なかなか話が進まない時期が続きました。そんな中、知人から「美瑛にいい場所がある」と紹介を受けたことが転機になったという。
(穂野香) -「旭川で100年近く続いてると思うんですけど、どうしてその美瑛という場所で、自分たちで藍を育てるとこから始めようと思ったんですか?」
(水野) -「ちょうどその建物が空いているとわかって、美瑛役場に貸してくださいとお願いして進めていったのがきっかけです」
縁に導かれて美瑛の地を選んだ結の杜。ブラザーのミシンなどの什器を大切に長く使い続ける姿勢が空間にも表れており、訪れたお客さんから
「昔ながらのものをしっかり使っているんだね」「歴史を重んじているんだね」
という声をいただくことも多いといいます。
時計のない空間――「時間を忘れてほしい」という想い
店内にお客様用の時計は一切置かれておらず、藍染め体験やカフェでの時間を思う存分楽しんでもらえるよう工夫されています。カフェにはWi-Fiとコンセントも完備しており、ゆっくり仕事をしたい人も気兼ねなく過ごしてほしい。そんな心内を教えてもらいました。
(穂野香) -「藍染体験やカフェなどのスペースがあると思うんですが、客様にはその結の杜さんでどのような時間を過ごしてほしいと考えていますか?」
(水野) -「時間を忘れてほしいんです。時計があるとどうしても時間が気になってしまうでしょ?」
(穂野香) -「そうなんですか!えー、すごい。確かに時計見当たらないです」
(水野) -「皆さんスマートフォンとか時計は持ってるので、あえて店舗自体には時計を設 置せずに、時間を忘れることができるような空間を作りたかったんです。やっぱどうしても時計があると時間がわかってしまうし時間に追われると楽しいものも楽しくないですから。」
(穂野香) -「うん。そうですよね。あと10分でやらなきゃとかってなります。(笑)」
AntaaLabが手がけた空間にも、そのこだわりが反映されています。1階のレジカウンター前には畳が使われ、棚は実際に収納として機能するよう設計されています。
染め物のサンプルをすぐ取り出してお客さんに見せられる棚の使い勝手は、水野さんのお気に入りのひとつです。
(水野) -「(AntaaLabの)社長が女性だからこその気遣いや心遣いが、しっかり空間に表れているところが好きです」
失敗がない、世界にひとつだけの体験
藍染め体験は、30分から1時間ほどで完成します。輪ゴムやビー玉など身近なものを使って布を縛り、藍に浸けるだけ。
(穂野香) -「私のような藍染め未経験の人や、興味のある人に向けて藍染結の杜さんの魅力を伝えるとなったら、何を1番に伝えたいとかってありますか?」
(水野) -「失敗がないんです。縛り方や藍への浸け方で仕上がりが変わるので、みんなが同じにはならない。だからこそ、失敗もない」
たとえば、2歳の子供がお母さんのTシャツをクシュクシュっと握って縛るだけでも、立派な作品になります。「この子が2歳の時に作ったTシャツだよ」と、ずっと語り継げる一枚になるわけです。年齢も経験も関係なく、その人だけの色と模様が生まれる——それが藍染め体験の一番の魅力かもしれません。
訪れるお客さんは日本人・外国人ともに多く、拓真館の近くという立地から流れてくる観光客もいます。藍染め体験を目的に来る方と、カフェにふらりと立ち寄る方、大きく2つの層があります。時間が限られている観光客にはカフェへご案内することもあるといいます。
アンタラボとの協働——「人柄がわかっているから伝わるニュアンスがある」
結の杜の空間づくりには、AntaaLabとの深い信頼関係がありました。
(穂野香) -「Antaa Labと一緒に空間作りをしてみて、印象に残ってるエピソードとか覚えてたら教えていただけると。」
(水野) -「直接イメージを伝えられることのありがたさがあります。人柄がわかっている人に伝えると、ニュアンスまで理解してもらいやすい」
(水野) -「大谷さんの感性が私は好きなんです。これをやりたいって言ったら、うん、じゃあこうしようかっていうパパっと親身に色々協力もしてくれるしこっちもするしっていう。」
水野染工場の社長とAntaa Labの大谷さんはもともと親交が深く、そのご縁が今の協働につながっています。空間づくりだけでなく、藍染めした一輪挿しやランプなど商品面でもコラボが続いており、お互いの強みを活かした取り組みが広がっています。アンタラボで販売している商品を結の杜でも扱うなど、双方のお客さんを自然につなぐ関係性ができています。
星空の下で藍と出会う——RVパーク構想が動き出す
(穂野香) -「今後の展望についてちょっと2つほどお伺いしたいんですけど。
とこれから家の場所を10年、20年後とどういう風な場所にしていきたいとかっていう展望みたいなのはありますか。」
(水野) -「星空を見てほしいんです。美瑛の夜空はとても綺麗で、キャンピングカーで泊まりながら満点の星空を楽しんでほしい」
(水野) -「そういった私たちだけっていうのも、周りの人たちと何か協力して、ちょっとずつ町に興味持ってもらえたらなっていう風に。」
今後の展望として、水野さんが語ってくれたのがRVパークの計画です。キャンピングカーで宿泊できる施設を1年以内にオープンさせたいといい、設計もAntaaLabに依頼しています。
近隣の農家さんとも連携しながら、美瑛の自然や農業の魅力をより直接的に感じてもらえる場所を目指しています。キャンピングカーの貸し出しも検討中とのことで、実現すればより多くの人が美瑛の夜を体験できるようになりそうです。
また、藍の認知度向上も大切なテーマのひとつです。
「ゆいの森を調べた人にしか届かない情報が、AntaaLabさんの発信を通じて
『こっちにも行ってみよう』というきっかけになってくれたら嬉しい」と水野さんは話します。
美瑛で、時間を忘れる一日を
藍染めのランプが柔らかく光り、古い什器が新たな命を得てカウンターに並ぶ結の杜は、美瑛の自然と手仕事のぬくもりが静かに共存する場所です。
予約なしで体験できる藍染め(空き状況による)、Wi-Fi完備のカフェ、そして近い将来には星空の下で過ごせるRVパークも。美瑛を訪れたら、ぜひ時計を外して立ち寄ってみてください。
店舗情報・お問い合わせ
店舗名:藍染結の杜
公式Webサイト:藍染結の杜
公式Instagram:@aizome_yuinomori
取材・文:AntaaLab インターン生 小泉穂野香
編集・大谷知央